七夕
もうすぐ七夕の季節ということで、トレーニングジムのある建物のエントランスホールに短冊が飾られていた。
以前までの僕なら、素通りするところだけれど、どんな願いが飾られているのか気になり、ふと足を止めてみることにした。
人々の欲望が渦巻く短冊。などと表現すると、ものすごく業が深くなるけれど、実際に飾られている短冊のほとんどが子供の吊るしたもので微笑ましく見ていられる。
そして、これが結構面白い。人の性格を表す一つの指針は願望であると言える。数多く存在する人間の欲求。そのバランスが人物の特色を担っていると言っても過言ではない。
しかし、とりわけ大人になると公に欲求を吐露するのは憚られる。特に大人になるほど肥大化していく金欲、肉欲、出世欲などは、多くの場合、忌避される対象なので、なかなか本音は見えてこないものだ。
なので、短冊に吊るしてある願い事の大半が(というかほぼ全てかもしれない)子供の書いたものだったりする。
同じ金銭欲でも、平がな混じりに拙い字で『宝くじにあたって10おく円がもらいたいです』と書かれているのが微笑ましく感じ、子供は素直で良いなぁと感じさせられるのはやっぱり子供ならではのキャラクター性が作り出すものなのだろう。
他にも『世界一のサッカー選手になりたい』や『かみのけ屋さん(恐らく美容師か理容師のことだと思われる)になりたい』、『〇〇くんと付き合えますように』などといったちょっと色気づいたものから、家族の健康と幸せを願うものまで、枚挙に富んでいて飽きることがない。
中には子供らしくないような願い事もあったりするのだけれど、とりわけその中でもシュール過ぎて思わず写真に収めてしまった一枚をアップしておく。
短冊の主が彼なのか、あるいは彼女なのか見当もつかないが、こんな切実過ぎる願い事を子供が短冊に書かなければならない世の中が心配になると同時に、短冊の主とさんまの間にどのような因果関係があるのか非常に気になる一文だ。
とりあえず、僕は、この短冊の主がさんまを食べ、生きぬいてくれていることを願うことにする。